煙の玩具09

 08で「どうやって入手したのか、忘れてしまっているパイプ」があることを書きましたが、このロバットなんて、まさにそれです。

 これが「本当にデンマークのファンシーパイプなのかよ」って思うほど、没個性的で無難で、目立たないパイプです。ステムもアクリルです。もう、デーニッシュ的なザックリとした、荒々しい雰囲気はぜんぜんありません。 Poul Hansen 本人は「古くからハンドメイドのパイプを作っていた」と言われており、その後、数人の作家を雇ってパイプを工房で生産することになります。パイプのシェイプはファンシーからクラシックなものへと変わっていったようなので、この没個性のパイプも Poul Hansen 自身が作ったものではなさそうです。工房がスタートしたときから、末期にかけてのものだろうと思います。

 僕にとっては、あまり「具合のいいパイプ」ではありません。重いし、これといって見る楽しみもありません。でも、具合は悪いのに、どうしても念頭から消えないパイプで、ほかのパイプの中に埋まってしまうと必死で掘り出し、手に握って安堵のため息をついたりします。

 多分、華はなくても、しっかりとした作りで、奇矯な意匠がまったく感じられないこのパイプは、僕に落ち着きを与えてくるのだと思います。