煙の玩具27

 一時、Hansen のパイプが40本近くになったとき、僕は自分で自分に問いかけることが多くなっていました。「お前は今、何をやっているのか」と。もちろん、僕が持っているパイプは Hansen のものばかりではありません。僕は自営業などではなく、パイプを喫える時間は、平日で2時間ほど。つまり、方向性を失い迷走し、何かに駆られるように購入をつづける自分が怖くなってきていたのです。

「50本で終わりにしよう」と、僕は自分に向かって応えました。今、思えば「50本までなら買っていい」と自分に許可を出していたのだということがわかります。心の奥底では自分自身すら欺こうとしていたようなのです。

 Hansen のパイプの数は、49本で一時、停止しました。不思議なものです。49本でピタリと止まり、2ヶ月ほどが過ぎました。そして、とうとう、自分についたウソを正当化する1本をヤフオクで見つけました。それがこのパイプです。

 50本目はロバットでした。その木は重く、硬く、ステムはサドルになっていて、カッコいいパイプです。「50本でやめる」という決心は、この日から1週間ほどで崩れてしまうのですが、それでも、この27のロバットは、今でも僕の中で特別な1本となっています。購入癖は治らなかったのですが、それでも僕にとっては「50本とそれ以外」という分け方は残りました。

 そもそも、30本目ぐらいから、ローテーションが飽和状態になってしまい、それ以後に購入したパイプは「ただ、持っているだけ」という状態になっていたのです。そして、パイプの整理などをやっているとき、僕の心にグサッと刺さるのは50本目、この27です。そういうとき、僕はこのパイプで一服します。このパイプは50本目にふさわしい、とても「具合がいいパイプ」です。