煙の玩具12

 確かに、いくら見た目が美しいパイプであっても、その人にとって「具合が悪いパイプ」ならば、手放すか、観賞用のパイプになってしまうでしょう。でも、運よくそれが、きれいで、しかも自分にとって「具合のいいパイプ」だったら。最高ですよね。

 牛角継ぎはハンドメイドパイプの特権です。もちろん「継ぎが牛角だって、美味さには全然関係ないだろう」という意見もあるでしょう。僕だって、どんなにきれいなパイプでも、僕にとって「具合が悪いパイプ」なら、持っている意味などないとは思っています。だからこそ、僕を裏切らない Hansen の中から、美しいパイプを選ぶのです(なんて言ってるけど、僕は外見に難ありでも Hansen ならば買ってしまうんですけどね)。

 とにかく、このパイプは、僕が初めて手にする牛角継ぎのパイプでした。まあ、おそらく Poul Hansen 自身が作ったパイプではないでしょう。多分、工房の、Hansen 自身とはタイプが違った美的感覚を持つ作家さんが作ったものだと思います。僕は、これは、ほぼ確定的に Poul Hansen の手によるものだろう、と確信できるパイプを数本、持っています。その拵えはあまりにもダイナミックで、何年経とうがこの牛角継ぎのパイプをデザインできるほど繊細な性格になれるとは思えないんです。

 でも、いいんです。このパイプのシェイプには、僕はまったく文句がないんです。どこにも文句のつけようがない。このパイプは、僕の持つ Hansen の中では“美の十傑”の中に入っています。