煙の玩具31

 このパイプの形は大好きです。ボウル部分がデーニッシュ、左右非対称のラフトップ、それでありながら、シャンクからステムにかけてはクラシックです。ハンサムなパイプなのですが、少し軽薄なので“美の十傑”には入れていません。

 パイプは、喫い心地と外見の美しさの間でバランスを取らなければならない道具ですが、この31のようなシンプルな拵え(あと、作者がエアフローのことを考えていてくれれば、もっといい。あくまで僕自身の考えですが、デンマークのパイプは、この部分で英国やドイツのパイプに勝てない場合が多いと思います。グレインの美しさを徹底的に追求することがテーマのパイプですから)だと、マイナスの要素が少ない。僕はこの31が、デーニッシュパイプの美しさと、オールドブリテッシュパイプの“性能”を兼ね備えた「非常に具合がいいパイプ」だと感じています。

 しかしまあ、デンマークのパイプの中ではもっとも数多く輸入されたといわれている Poul Hansen のパイプですが、こんなシェイプまであるのには驚きました(後に、もっとヘンなパイプも紹介しますが)。ちなみにこのパイプは多分、オクで落としたのだと思いますが、出品者様もどうやってこんなパイプを手に入れてくるのでしょう。

 ちなみに、このパイプのステムはエボナイトで、初期と後期という粗い分け方をするのであれば、前半のパイプということなります。 Poul Hansen 自身の作品なのでしょうか? 僕は工房で働く作家さんに、変った趣向の持ち主がいたのではないか、と想像していますが。