煙の玩具39

 このパイプ、謎といえば謎です。

 本来、 Poul Hansen という人は、作家でした。そして、次に、パイプ職人たちを集め、Poul Hansen という名前は工房の名前となります。多分、本人である Hansen を筆頭に、それぞれの癖はあったと思います。けれども、工房ですから、ひとりひとりは好き勝手なことはできないはず。お互いに主となる路線から逸脱しないようにしたはずです。そうしないと、お客様は、その工房のどこが売りなのかわからなくなってしまいますからね。であればこそ、ラインは似ています。似すぎていて、今度はファンが「どれが本物の Poul Hansen のパイプなんだ」と、考えるわけです。

 ところが、このパイプは違います。ただ、そこに存在します。Poul Hansen のパイプとして。僕は落札するまえに、何度も何度も画像を見ました。たくさん、Hansen のパイプを見てきましたが、このパイプのシェイプは、他の Hansen のパイプと協調する気がまるでないみたいです。どこかが根本的に違います。実はこれこそが Poul Hansen が自ら作ったパイプのひとつなのでしょうか。まあ、恐竜を語るのと同じように、答えなんて出るはずがないのですが。

 意外なことに、このパイプは僕にとって、かなり「具合がいいパイプ」です。全長は短いのですが、煙が眼にきません。そして、喫っているときにボウルの中がある程度、見えるのです。だから、火種の調整が楽です。僕にとっては、美しいと言い難いシェイプのため“美の十傑”には入れてはいませんが、僕には使いやすいパイプなので、見るたびに「買っておいてよかった」と思います。