煙の玩具40

 Poul Hansen のブルカップです。これも本来は、数をそろえるため(この頃の僕は、とりあえず、Poul Hansen を50本、集めてみようと思っていました)に落札したものでした。短いパイプには散々、痛い目にあわされていますし「買っても火を入れることなんか、ないんだろうなあ」と、本当にこんな気持ちでいたのです。だから、普通は胸躍るはずの下駄箱の上の小包にも、少しも心が動きませんでした。

 ところが、このパイプを僕は今、とても大切にしています。デンマークパイプだから、もう1本手に入れることは不可能だろうという気持ちで、紛失を怖れています(僕はしょっちゅう、記憶がなくなるほどお酒を飲みますので)。

 そのように作ってあるのか、偶然の効果なのかはわかりませんが、この短いブルカップは、喫っていても(その場所が無風であるなら)、煙が目のほうに来ないのです。これには驚きました。僕にとっては決して美しいパイプではないため“美の十傑”に加えるわけにはいかないのですが、それでも大事なパイプの1本です。煙さえ目のほうに来なければ、短いパイプは取り回しが楽だし、便利です。このブルカップは、僕のパイプの中では珍しく、わりと頻繁に家の外へ持ち出されます。一時は、僕のトレードマークになっていたほどです。、Poul Hansen 自身が作ったのでしょうか、それとも職人さんの誰かでしょうか(その人はきっと、仕事に厳しい人です)。ステムがエボナイトなので、新しいパイプではありません。もしかしたら、工房としての、Poul Hansen 時代の初期、さまざまな可能性を試すために作られた1本なのかも知れないなあ、とか勝手に想像しています。