煙の玩具41

 ひょうきんなパイプです。

 なんか、SFチックです。未来派というのでしょうか。長いのです。でも「具合がいいパイプ」なので、喫うときは楽です。カッコよすぎてカッコ悪いっていうか、家から持って出たことはありません。

 とにかく、異彩を放つパイプで、作った人の目が未来に向いていたことがすぐにわかります。多分、工房の職人さんの一人だと思いますが、過去にまったく囚われていません。シャンクとステムの境の部分は、ステムが多面体のようになっていて、さらに未来派志向が垣間見えます。

 こんなに未来派のシェイプなのに、このパイプのステムはエボナイトです。Poul Hansen の工房の作品に、ざっくり分けて前半と後半があるならば、前半に分類されるパイプなのです。作り方は極めて忠実にグレインを追いかけているので、ボウルの表面を見るとため息がでます。グレインを追いながら作ったら、こんなふうになっちゃたんでしょうか。でも、長すぎるシャンクの部分には、ほとんど柾目がありません。おまけにステムのデザインが宇宙的です。誰にせよ「私は正しい」という確信に満ちた作家さんが作ったのでしょう。

 もし、このパイプを作った人が「いつか未来に理解する人がいるさ」と考えていたのだとしたら、その人を喜ばせてあげたいです。彼の心を僕が確かに受け取りましたから。家の外で使う気には、やはりなれませんが。