煙の玩具62

 これはおそらく、新世代の HANSEN パイプです。

 僕は、こういったパイプを“平成 HANSEN ”などと勝手に呼んでいます。デンマークには、故・ハンセンと同じ名前の“Poul Hansen”という喫煙具のお店があり、おそらくはそこで販売されたパイプだと思われます。

 僕は、この“平成 HANSEN ”を他に2本、所有していますが、ここでは取り上げていません。僕はパイプの旨さというものは複雑系であると考えています。何かひとつの条件によって不味くなったりはしないと思っているのです。
 しかし、新世代の HANSEN のパイプは、その流麗な景色に反して、この僕にも「……?」と思わせるものでした。

 親切な方がおりまして、このパイプがオクにあがっていることを教えてくださいました。
 その人の好意を無視したくなかった僕は、祈るような気持ちでこれを落札しました。

 かつての工房、Poul Hansen では、パイプに“HANSEN BRIAR”“HANDMADE”“MADE IN DENMARK”の文言が打刻されていました。 
 僕が言うところの“平成 HANSEN”には、普通“HANSEN BRIAR”というそっけない文字が打ち込まれているだけです。これもそういったパイプの一本であることは、商品説明を読むだけでわかりました。

「具合が悪くてもしょうがないや」と僕は開きなおることにしました。それでも、パイプが届き、火を入れるときはドキドキもんだったのですが。

 僕は思います。「常に例外といったものがあることを念頭に置かねばならない」「断言してはいけない」。
 このパイプは喫えるパイプだったのです。手持ちの HANSEN の中で一際具合がいい、とか、そういったことではありません。けれども、他の2本の“平成 HANSEN”よりは、ずっと具合がいいパイプだったので、安心しました。また、61のパイプと、いい感じで“対”になるのも嬉しいと思います。

 僕は、このパイプを手持ちのものとして公表します。教えてくださった方に感謝いたします。